マサムネの名前は角谷正宗。日本人だ。
 正宗は比較的最近このジムに入ったらしい。つまりわたしの少し先輩だ。
 けれどもベイの腕はかなりのものだ。わたしは一回も勝っていないのはもちろんまともな勝負になったことがない。
 でも正宗はそんなわたしとでもよくバトルをしてくれる。正宗は正直だから、よく、わたしは弱いとかわたしとのバトルは楽しくないとかいろいろなことを言ってくれるけど、わたしにはそれはちっとも不快じゃなかった。むしろ正宗のその裏表のない態度が嬉しかった。
 正宗は明るい。
 正宗はわたしに優しい。
 正宗はみんなに優しい。

 わたしの名前はフェリス・シルヴェスティア。アメリカ人だ。
 わたしは暗い。わたしはおとなしい。わたしは人見知りだ。わたしは人と付き合わないためのありとあらゆる性質をもって生まれてきた。
 だから知らない人ばかりの、それも男の子ばかりのジムに入るということは、わたしにとってはライオンの檻に放り込まれるも同然だった。
 けれども明るくて元気な正宗が、他のみんなにするようにわたしにも接してくれるから、こんなわたしでもジムのみんなと接することができた。
 最初はじょうずにできなかったベイも、もちろん今でもじょうずではないけれど、上達した。
 そして何よりも、すべてのことに対して前よりもずっと積極的になった。身の回りのさまざまなことが楽しくなった。

 すべてはベイブレードのおかげだ。
「正宗。」
「ん、なんだ?」
「バトルしよう!」
 だからすべては正宗のおかげなのだ。わたしにさいしょのきっかけをくれた正宗の。