| 正宗が帰って来る! 正宗が帰って来る! 正宗が帰って来る! わたしはこのときだけは、過去も未来もぜんぶ捨ててただひたすらに嬉しかった。 だって正宗が帰って来るのだから! わたしが今いるアメリカに。 それも世界大会で戦うブレーダーとして、だ。いつもがんばっていた正宗の努力が正宗にほほえんだのだ。こんなに嬉しいことはない。 世界一を争う敵として、とかはもはや関係がない。わたしは確かにゼオのいるスターブレイカーを応援していたけれど、それは別にアメリカ代表だからではない。ゼオがいるからだ。ゼオは友達だからだ。友達の勝利を祈っただけだ。 そしてもうひとりの友達が帰って来る。これを喜ばないことがあるだろうか! いつ帰って来るのかは分からない。わたしは世界大会のスケジュールにはあまり詳しくはないけれど、もう既に決勝リーグ第一戦は終わって、次は第二戦で、だからそれまでには帰って来るはずだ。たぶん。 わたしは正宗が帰って来たらすぐに出迎えたかった。すぐに会って、いちばんに会って、いちばんにお帰りを言いたかった。 でもわたしはいつ帰って来るのかも、どこに帰って来るのかも知らなかった。 それでもわたしは知っていた、正宗ならきっとダンジョンジムにすぐにやって来るだろうことを! まっさきにトビーに会いに病院に行くかもしれない。でも正宗はトビーに会うことはできない、なぜならゼオがトビーを転院させたからだ。 そうなるとやっぱり、正宗はダンジョンジムに行く。もしかしたらその途中でゼオに会うかもしれない。ジムに行けば必ずコーチに会って、オーエンやブレッドやブルースにも会うから、… そうして考えていったら、何も知らないわたしが正宗に会うことができる順番はそうとう後になってしまった。わたしはいっしゅん落ち込んだ。でもすぐに思いなおした、やる前から諦めちゃだめ! わたしはわたしにできる限り早く正宗に会いに行こう! そう思ってわたしは正宗がアメリカに帰ると知った日から、毎日毎日ジムの扉の前で待機した。 扉をちょっと開けて顔を出したコーチに言われたこともあった。その下から現れたオーエンとブレッドとブルースにも言われた。 「ジムに入って待てばいいじゃないか。」 だけどわたしにはそうすることができなかった。会費を払えないわたしがジムに入るのはためらわれることも理由だったし、それにわたしはジムに来た正宗に誰よりも先に会いたかった。 ここで待っていれば、ぜったいに正宗はここに帰って来る。そして会うことができる。わたしはそれだけを楽しみにして待ち続けた、 ら、何と、わたしがいないまに正宗がここを訪れたらしい! 「(何ということなの…!)」 その日は偶然、わたしはジムに行って待つことができなかった。お家の用事で、どうしても外せないものがあったのだ。まさか、わたしがいなかったその日に限って、正宗が帰って来るなんて! わたしは少しだけ泣いた。でも正宗がわたしのことなんてお構いなしに自由なのはいつものことで、そもそもこれは単に運がなかっただけのこと、わたしはすぐに涙を拭いた。 そしてジムにたびたび顔を出すようなことを言った正宗が今日こそやって来てくれるのを信じて、わたしはこうしてジムの扉で待つ。 扉の前で待っていると、中からみんなの声が聞こえてくることがあった。 「(楽しそうだなあ……)」 わたしはその声に寄せられて、からだの向きを変えた。誰かが勝った、誰かが負けた、だの聞こえてくる。コーチの雷も聞こえた。懐かしくなってわたしは思わずほほえんだ。 あの日あのときわたしはこの声に魅せられて、ジムの扉の前に立った。そうしているうちに怖気づいて、こんなふうにからだの向きを帰るほうに変えそうになったとき、正宗が、 「こんなとこで、何やってんだぁ?」 と声をかけてくれたから、今のわたしがここにいる。 そう、今のわたし、が…。 わたしは驚きのあまり固まった。今の声はわたしの回想なんかじゃなくて、ほんとうに耳で聞いた声だ。 「ま、まさむね…っ!」 からだの向きを変えると、すぐそこには正宗が立っている。眩しい笑顔を顔に浮かべて、わたしをその目で見て、ここに立っている。 「よーフェリス! 久しぶりだな!」 「まさむねぇーっ!」 自制心が許せば正宗に抱きつきたいくらいだった。そうはできずにわたしは正宗の両手をとって、溢れてくる涙とか涙とか涙とかを抑えられない。 「正宗…!」 「ははっ、何だよフェリス。泣くなよ。」 「だって会いたかったんだもん…!」 「ああ、そうだな。オレもだ。」 「正宗…」 言葉上は何だか甘ったるいそのセリフに、わたしは少し驚いて正宗を見た、けど、直後にすぐに気付く。だって正宗だもの、この言葉の意味なんて決まっている。 「ちゃんと強くなったか? バトルしようぜ!」 「うん!」 そしてわたしはそんな正宗のことが大好きなのだった。 |