「こんにちは! あれ、正宗は?」
「おいおいフェリス…。第一声がそれか。」
「だってコーチ。」
 ジムへ行ったら正宗もガンガンギャラクシーのみんなもいなかった。そればかり期待していたわたしはなんだか拍子抜けした思いだ。
 ちなみにわたしは、世界大会が終わるまでという期間付きで、ジムに出入りさせてもらうようになった。ガンガンギャラクシーのメンバーがいることはジムのみんなの勉強になるから彼らはよく顔を出していた。わたしはちょっとしたおまけだ。またちょっとずつお小遣い溜めて、いつかジムに堂々と通おうっと。
「みんなどこへ行っちゃったの? それとも今日は偶然来ていないだけ?」
 わたしがジムへ来るのがちょっと遅れた今日に限って。何だかわたしはずっとついていない。
「何でも、修理したアクイラとリブラの試運転をしたいとかでな。場所を紹介してやったら出て行ったよ。」
「そうなの…。」
 わたしはとぼとぼと歩いて壁際の椅子に座った。
 オーエンが質問してくる。
「行かないのか?」
「わたしはいい。ここで待つよ。」
「行けばいいのに。」
「別にいいってばー。」
 こうしてわたしが変な意地を張ることはあまりないことだったから、オーエンが少し戸惑っているのが分かった。
 でもわたしには行くことができなかった。だってわたしは元々、暗くて、おとなしくて、人付き合いが苦手だったし。ジムのみんなと仲が良いのは特別なことで、でなければわたしが知らない人ばかりのところに正宗求めて行けるはずがない。
 理由は、それだけではない。わたしはかつてわたしがあの仲良し三人組のお誘い(三人はよく、三人だけの練習場で、缶を飛ばす競争をしている。それに誘われたことがあった)を断ったのと同じような理由で、正宗のいるところに行くことができなかった。
 わたしは別に、正宗と正宗の新しい仲間との図形を私の希望から壊したくなかったのではないけれど。あの図形にはわたしは入り込めないのを感じていた。
 正宗と、わたしの知らない正宗の仲間との、わたしの知らない絆。そんなものに触れるはずがない。
 椅子に座ってむくれるわたしにコーチが言った。
「だったらフェリス、おまえもちゃんと練習していけ。ほらオーエン、強くなったフェリスに勝負してもらったらどうだ。」
 もちろん練習そのものは大歓迎である。わたしはわたしの大好きなダンジョンジムでの練習が大好きだった。
 わたしは近くに立つオーエンに向けて言った。
「受けて立つ!」
「ええー、やだよ。フェリス目がマジなんだもん…」
「いいでしょ。逃げてちゃだめだよ。やろうやろう!」
「そうだぞオーエン。強くしてもらえ。」
「そう言うおまえこそどうなんだよ、ブレッド!」

「あっ正宗! おかえりなさ…」
 正宗たちが帰って来たのはずいぶんと遅くなってからのことだった。ベイ二つの試運転というには長すぎる時間が経過していた。
 それに、試運転したベイの持ち主である二人の姿が見当たらない。何よりも現れた正宗と鋼銀河の面持ちが暗い。
 何があったのかは察することもできなかった。何かがあったということだけが、いやというほど分かった。
 おかえりなさいを最後まで言うことができなかったわたしは、それ以降何も言えなかった。
 何も聞けなかった。
「(…気になることを聞かないくせがついちゃった。)」
 誰かさんのおかげで。